俺は考えごとをするために、自分の部屋に引きこもっていた。
涼太 「渚沙が泣いてないのはいいことだけど……こんな状況、いつまでも続けてられないぞ」
それは、俺の身が持たないということもであるけど、それ以上に……。
……こんな誤魔化しは、いつまでも続かない、ということだ。
今は一時的にりんかが喧嘩相手になることで、渚沙の気持ちを逸らしてくれているけど……。
それは、りんかが身体を張って渚沙の気を紛らせてくれているだけだ。
りんかが機転で稼いでくれたこの時間で、俺がなんとかしなくちゃいけない……。
涼太 「はぁぁ……そうは言っても、ほんと、どうしたもんかなぁ」
一人で頭を悩ませていると、いきなり勢いよく部屋のドアが開いた。
涼太 「うわあ!?」
開いたドアから、渚沙とりんかが競うように飛び込んできた。
涼太 「な、なにごと!?」
りんか 「お菓子焼いたの! 食べて!」
渚沙 「まずはあたしの食べてよ!」
よく見ると、二人は手にクッキーの入った器を持っていた。二人の自作らしい。
りんか 「わたしが先だよ! わたしの方が先だったでしょ」
渚沙 「先に焼けたのはあたしのクッキーだったでしょ!」
りんか 「先に部屋に入ったのはわたしだもん」
渚沙 「同時だったわよ!」
涼太 「お、おい。そんなことでケンカするなよ」
渚沙&りんか 「そんなことってなによ!?」
「そんなことってなによ!?」
涼太 「ひいっ!?」
なんで俺が怒られるんだ?
というか、りんか……機転を、きかせてくれた……んだよな?
渚沙 「だいたい、りんかのクッキー砂糖多すぎなんじゃない!? そんなの食べたらリョータが病気になるわよ!」
りんか 「お菓子なんだから甘い方がいいに決まってるじゃない!」
りんか 「リョー君だって甘いの好きだよね!?」
涼太 「そりゃ嫌いじゃないけどさ……」
りんか 「ほらー!!」
渚沙 「リョータ、ダメだって。ほんとに病気になるから」
りんか 「ま、真面目な顔で注意しないでくれる!?」
渚沙 「それに、リョータにはスウィートよりビターなクッキーの方が似合ってるわよ」
渚沙 「大人でふか~い関係のあたしたちにはね」
涼太 「お、おお……」
りんか 「むぐぐぐぐぐぐぐぐっ!」
渚沙 「ふふふ。ほら、リョータ、あーん♪」
涼太 「え? いや、それはさすがに……」
渚沙 「隙あり!!」
ズボッ!!
開きかけた口に、素早くクッキーが押し込まれてきた。
涼太 「むぐぐぐっ!?」
渚沙 「どう~? 美味しいでしょ?」
涼太 「むぐぐぐぐぐ!」
口がいっぱいで喋れん!
りんか 「苦すぎない? 口直しに甘いのどーぞ♪」
ズボッ!!
涼太 「むぐうう!?」
今度はりんかのクッキーが!?
りんか 「どう? 甘くて美味しいでしょ~?」
涼太 「む、むぐぐぐぐぐうっ!!」
ちょ、こんな状態で口押さえたら息できねーだろ!!
渚沙 「ちょっと! なにするのよ!? 無理矢理口に押し込むなんて非人道的だわ!」
りんか 「そっちが先にやったんでしょ!!」
涼太 「むぐぐぐぐう……」
く、苦しい……。
渚沙 「あれ? リョータの顔が青くなってる?」
りんか 「息してない! マウストゥーマウス!」
渚沙 「待ちなさいっ! それは彼女のあたしが!!」
りんか 「ちょっと、邪魔しないで!!」
涼太 「むぐう……」
し、死ぬ……。
(to be continued…)